自作診断の書き出しに繋げて書き始めたもの。
Twitterのフォロワーさんのあずさん(染赤さん@someaka_ /HP:someaka illustration/pixiv)と線画交換コラボして表紙を描いていただきました( ' ' * )→その時のツイート(画像付き)
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ラーダは大きくため息をついた。
遠くから勝鬨が聞こえる。戦は終わったのだろう。
血を失いすぎたのか、視界がぼやけた。
いまになって腹の底から沸き上がる震えに、
「満身創痍だな」
誰かの声に、ラーダはのろのろと顔をあげた。
「……ヴォルクか」
「ああ」
目の前に立っていたのは、ダジル国の王子、ヴォルクだった。
だからこそ、ラーダは無遠慮に眉を潜める。
「お前、その血は」
「返り血だ」
ラーダの眉間の皺が深くなったことに、ヴォルクは気づかない。
「……また前線に出たのか」
「ああ」
さらりと言ってのけるヴォルクに、ラーダは歯噛みする。
ふらつく足でヴォルクに歩み寄り、ぐいと胸ぐらを掴みあげた。
それが、さらにラーダの感情を波立てた。
「いい加減にしてくれ。
「……俺が死んだところで、リシッツァ叔父上がいる。
だから、俺ひとり死んだところでどうということはない、
「……お前が死ねば、皆が悲しむだろ」
そう言いながら、
遠くなっていく意識の向こうで、ヴォルクが口を開いた。
「………俺は」
微かに震えているその声と、
血で汚れていて気付かなかったが、
ヴォルクは続ける。
「……俺は、母上の……王妃の命の一部と、引き換えに生まれた、
無機質だった瞳に、はじめて感情が映る。
「無理をさせてすまない。傷が深いんだろう。
「おい、ヴォル……っ……!」
再び淡々とした口調に戻って歩み去るヴォルクを呼び止めようとし
喉の奥で低く呻きながら、ずるずると地面に座り込む。
(……『血濡れ』か……)
ぼんやりとそんなことを考えて、
『血濡れの狼』
それは、あまりに剣の腕が立ち、
それを、自分は呪われの王子だからと、
(……きっと、余計な世話だと言われるだろうがな)
ラーダは苦笑した。
それでも、願ってしまうのだ。
生まれながらに多くの者達に疎まれ、
(……そのためなら、できることはいくらでも、手伝うから……)
ああ、瞼が重い。
駆け戻ってくるヴォルクの気配がした。