人名集


『ア』

アリェーニ:ダジル国前王妃。艶やかな黒髪と、濡れ羽色の瞳。絶世の美女と名高く、優しい、儚い女性だった。王子を出産後病を得て、ずっと床に臥せっており、王子が15歳の年に亡くなる。享年39歳。


イーニャ:『猫の館』で働いている小柄な女性。


イェラキ:現アレス国王。鳶色の髪と目を持っている。穏和な性格で、争いをあまり好まないが、剣の腕は一流。ネスルが王女として立っていた時期は、ネスル付きの近衛兵だった。現在35歳。


ヴォルク:ダジル国の王子。ダジル国第一王位継承者。黒に近い深紅の瞳と、黒の髪を持つ。寡黙な少年でありながら、先の戦では最前線に赴き、前アレス国王の首を挙げた。その功績ゆえに、ダジル国では英雄と呼ばれながら、一方で他国や国内の一部からは『血濡れの狼』と揶揄され畏怖されている。現在19歳。


エシリア:ダジル国の下町にある酒場『猫の館』の美しい歌姫。若くして王宮にて歌っていたこともあるほどの実力者。歌の他にも、様々な楽器を弾きこなす。ネーシャとは夫婦。昔のよしみでリシッツァと友好があるとか。現在25歳。




『カ』

ガーラ:ユーサの叔父。戦記司だった。優しい風貌の、穏やかな人だった。享年43歳。


キリル:ズミェイの部下の若者。背中までの黒髪をうなじでひとつに括っている。ズミェイを慕って兵士になった。あだ名はキィ。現在20歳。


ククヴァヤ:サクルの侍女兼教育係。博識であり、隠密行動にも秀でている。鳶色の髪をすっきりとひとつに束ねた、しっかりした印象の女性。ネスルやサクルからはクゥとあだ名で呼ばれることもあり、ネスルとサクルから全幅の信頼を受けている。現在25歳。




『サ』

サクル:アレス国の女王ネスルの妹姫。白銀の髪に蒼い瞳を持つ、愛らしい少女。明るく社交的で、優しい性格。母国アレスでは、『地の上を歩むモノの詩』を諳んじる姫巫女でもある。現在18歳。


ズミェイ:メドヴェージの重臣だった男性。慎重で、細々とした部分によく気がつく。痩せ型で、ダジル人男性にしては少し背が低い。老けて見られることもある険しめな顔に、柔和な表情を乗せている。リシッツァとは同期のようなもので、悪友だと思っている。現在32歳。




『タ』

トーニャ:トントの母。トントと同じく白の子で、儚げな美しい人だった。


トンカ:トントが住む村の村長である婆。色が抜けて真っ白になったパサパサの髪と、白く濁った目をしている。顔はしわくちゃで醜いが、よく見ると笑いじわが深く愛嬌がある。皮肉屋でしょっちゅう人をからかうが、その実とてもおおらかで優しいため、村人皆に慕われる。母親を亡くしたトントを引き取り、彼女なりに慈しんで育てている。年齢不明。


トント:真っ白な肌、白銀の髪、銀の瞳を持つ、華奢な少年。気弱だが優しい性格。白の子であったために、村の人々以外からはあまりいい扱いは受けていなかったが、猫の館で働き始めてからは、ネーシャやエシリア、常連客からも可愛がってもらっている。家族には母がいたが、数年前に亡くしてからは、村長であるトンカ婆のところで日々を過ごしている。トンカ婆からは可愛がってもらっている様子。現在12歳。




『ナ』

ネーシャ:ダジル国の下町にて、酒場『猫の館』を経営する酒場主。ひょろりとした長身痩躯の優男で、赤茶けた黒髪と、いたずらっぽい瞳が特徴である。現在28歳。エシリアとは夫婦。


ネスル:アレス国の現女王。白銀の長い髪を高く結い上げ、すっきりとした涼しげな目元には強い意思が感じられる。飾らない性格で、常に民にとっての最善を尽くすことに全力を注いでいる。また、戦時には前線にて指揮を執るほどの実力と勇ましさをも持つ。妹姫のサクルをことのほか可愛がっている。現在29歳。




『ハ』

ハーナ:小高い山の一角に庵を組んで生活している、民草のための医術師。トンカ婆を師と仰いでいる。黒く、真っ直ぐな髪を肩口で切り揃えている、しっかりとした女性。涼しげな目元が印象的。ユーサとは幼馴染み。現在22歳。




『マ』

メドヴェージ:前ダジル国王。黒髪と強い意思を秘めた黒に近い深紅の瞳を持つ。厳つい風貌だが、案外おおらかで気さくな性格のために、多くの民に慕われていた。王妃に先立たれてから、少しずつ狂い始め、ダジル国とアレス国の間に、戦争を引き起こした。享年50歳。




『ヤ』

ユーサ:戦記司。柔和な笑顔が印象的な女性。元々は黒髪黒眼だったが、いまは仕事が原因で色が抜けて、柔らかな薄茶色の髪と瞳をしている。戦記司見習いになったのは15歳のとき。18歳で戦記司として一人立ちした。ハーナとは幼馴染み。現在22歳。




『ラ』

ラタ:リスのような尾と垂れて髪に紛れる獣の耳を持つ、小柄な少女。瞳は深い蒼。柔らかな髪や尾と耳を覆う毛は焦げ茶色。優しいが、臆病な性格。魔の子。現在10歳程度だが、4、5歳に見えるほど小さく、幼い風貌をしている。


ラーダ:ヴォルクの幼馴染みであり、従者。ざっくらばんで大胆な性格。ヴォルクに対して心配性なきらいがある。黒髪をさっぱりと短く切り揃えている。表情が豊かで、元気がいい兄貴分。現在20歳。


リシッツァ:ヴォルクの叔父で、メドヴェージの弟。メドヴェージにはあまり似ておらず、優男なイメージが強い。おおらかで気さくな性格はよく似ている。口がうまく、よく口下手なヴォルクをからかっている。メドヴェージの重臣であり、ダジル国第二王位継承者。ズミェイとは同期のようなもので、親友だと思っている。現在32歳。




『ワ』